ユナイテッドの前半戦の不調の原因、そこから見るユナイテッドがサンチョ獲得を熱望する理由

 

ポゼッション率が高い試合は勝てないのにポゼッション率が低い試合は勝てる」

 

格下相手には苦戦するのに強豪相手には近年稀に見る強さを発揮する」

 

今季のユナイテッドはそんな傾向が続いた。

 

 

薄い選手層、相次ぐ怪我人、単調な攻撃etc……

ファンのフラストレーションは高まり続け、昨季ファンの圧倒的支持から見事正式監督の椅子を射止めたはずのスールシャールへの評価は解任一歩手前まで落ち込んだ。

 

 

結果が振るわないスールシャールの後任としてポチェッティーノ聘が確実視されるようなクラブの動きすらあったが、対強豪クラブでの試合や進退がかかっていると噂された試合など要所要所では結果を出し、辛くも監督の椅子を守り抜いた。

 

これは新加入選手が上手く適応出来たこと、ラッシュフォードやフレッジマクトミネイなどの覚醒とも言えるような高パフォーマンスなどの要素が大きいと思う。

 

冬の移籍市場閉幕直前でのフェルナンデスの加入により、一時は絶望的と思われたTOP4入りも手が届くような位置まで順位を上げたことによりスールシャールへの評価も一変。

 

スールシャールをDoFに昇格させ、ポチェッティーノアッレグリを監督として招聘する案を出していたのが懐かしさすら感じますね。)

 

快進撃を続けていた中で不幸にもcovid-19の影響でリーグは中断されてしまったが来季もスールシャール政権が続くことが予想される。

 

 

長くなってしまった前置きはこれくらいにして、今回は前半戦の不調の原因、フェルナンデスの加入によりチームが上向いた理由を探るとともに何故ユナイテッドがサンチョ獲得を熱望しているのか、タイトルを目指すために補強すべきポジションはどこなのかについて触れていきたいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

S1.前半戦の不調の原因

 

 

前半戦の不調の原因は、ビルドアップを構築出来ないこと、攻撃にアクセントをつけられる選手が不在だったことを要因とする、相手にとって予測しやすい単調過ぎる攻撃にあったと思う。

 

ポゼッション率が低くなる傾向の強い、対強豪クラブでの試合は、カウンターやプレッシング、ボール回収能力などの面でユナイテッドの選手が持つ高いアスリート性が発揮されやすい性格が強い一方で、ポゼッション率が高くなる傾向の強い、対格下クラブでの試合はビルドアップや攻撃の多様さなどが重要な要素となるが前半戦のユナイテッドにはこれが欠けていた。

 

 

 

スールシャールは攻撃陣を選手層が特に薄い状態で今季をスタートさせたことで多くのオプションを持てなかった。

 

シーズン当初から選手層の薄さは懸念されていたが、マルシャルが怪我により2ヶ月ほど離脱したことにより不安は見事的中。

クラブ再建のため、多少の厳しい台所事情は織り込み済みだったと思うがここまでになるのは計算外だったのではないだろうか。

 

選手層だけでなく、ペレイラやリンガード、チェルシー戦でFKを決めるまでのラッシュフォードなどの不調も含め、予測が甘かったと言わざるを得ない。

冬の移籍市場ではフェルナンデスとイガロを加えたが、薄すぎた選手層にクラブ側も反省があったのではないかと思われる

 

 

ここからが本題であり、薄い選手層にも関わることなのだが、単調な攻撃に終始してしまった最大の理由は中盤の展開力のなさとRWGの不在にある。

 

スールシャールは元々ビルドアップの整備を苦手とする監督ではあるが、ポグバの離脱により創造性だけでなく中盤の展開力が大きく低下した。

 

元よりビルドアップはマグワイアとリンデロフのCBコンビにかなり依存していた面があったが、その傾向が強まるだけでなくフレッジとマクトミネイという展開力が並、もしくは平均以下の中盤はポゼッション率を無駄に高めるだけでビルドアップに貢献出来なかった。

マクトミネイが離脱したことにより、意外にもビルドアップに貢献出来るDMであるマティッチがレギュラーに返り咲き、チームのパフォーマンスが少し向上したのはビルドアップが改善されたからである。

 

またビルドアップ面の問題は何も中盤だけのものではなかった。

中盤の展開力に頼れないビルドアップは両CBからのロングフィードかSBを経由するルートという2択に限られていたが、SBのレギュラーを担ったAWBは元WGだとは思えないほどに攻撃性能が低く攻撃で幅を創れない。

 

加えて主にレギュラーWGを務めたジェームズがWBに近い役割を任されるだけでなく、中央と上手く絡む判断能力や視野を持っていなかったために右サイドは特に相手にとって予測のしやすい攻撃に終始することが多く見られた。

 

今季は右サイドで出場したマタが攻撃を活性化させ、存在感を見せることが何度かあったが、それは中央と絡むことで攻撃にアクセントをつける役割が出来ていたからだろう。

とはいえ突破力のないマタは右サイドの解決策になるにまでは至れず、また対面の相手を突破するドリブルを持たず、フィニッシャーとしての性格の強いグリーンウッドはWGとしてはインパクトを残すことに失敗した。

 

時に中盤に下りてビルドアップに貢献する役割を担うこともあるトップ下に入ったリンガード、ペレイラも展開力を持ち合わせておらず、またこの2人はプレッシングや運動量でチームに貢献するタイプの選手であり、ビルドアップに貢献したり、ライン間でボールを受けたりすることが出来るタイプの選手ではなかった。

そればかりか2人は不調に苦しんだことでむしろチームの攻撃にストップをかける要因にすらなり、大きな批判を浴びることになってしまった。

 

 

このような状況下で、さらに左サイドで気を吐き、攻撃を牽引していたラッシュフォードが離脱したことにより、周囲のサポートをほぼ完全に失ったマルシャルは孤立し、xGを大きく落とすことになった。

 

 

薄い選手層によるオプションの少ない陣容、怪我人、ビルドアップを整備出来ない監督、ポゼッション率を無駄に高めるだけのボール回ししか出来ない展開力のない中盤、カウンター以外では予測しやすい攻撃に終始してしまう右サイド、これらが要因となって前半戦の不調はもたらされた。

 

 

 

 

 

 

S2.フェルナンデスの加入による影響

 

 

攻撃を牽引していたラッシュフォードの長期離脱が決定したことで絶望のシーズンになりかけていた中、加入後すぐに強いインパクトを見せ、チームの調子を上向かせることに成功したフェルナンデスは瞬く間にユナイテッドの中心選手となった。

 

フェルナンデスはポグバの離脱以降、ユナイテッドに欠けていた展開力や創造性を持ち、ゴールやアシストという最終生産物である数字も残せる選手であり、ライン間でボールを受けることも出来る。

特に展開力という強みは中盤深くの位置に落ちた時に発揮され、ユナイテッドのビルドアップに大きな改善をもたらし、チームのパフォーマンスを向上させる起爆剤になった。

フェルナンデスの加入によりようやく標準レベルに達したユナイテッドのビルドアップがこれからどのような好影響を与えるか楽しみだ。

 

フェルナンデスの加入により1番恩恵を被ったのはマルシャルだろう。

フェルナンデス加入前までは周囲からのサポートが十分とは言えないものだった。もちろんマルシャル本人にもCFとしての動きに改善すべきところが多くあるが安定したパフォーマンスが出来るような環境ではなく、少しかわいそうだった。

ようやく周囲からのサポートを受けられるようになったことでxGはラッシュフォードの離脱以前の水準に戻すことが出来た。その証拠にフェルナンデスの加入により、マルシャルが試合中に見せる笑顔が増えたように思えるし、チームも安定した結果を出せるようになった。リーグ再開後にはポグバだけでなく、ラッシュフォードも復帰してくるので新生ユナイテッドを見ることが出来るだろう。

 

 

 

 

 

S3.ユナイテッドがサンチョ獲得を熱望する理由

 

 

ここまで読んでもらえれば分かると思うが、前半戦の不調の要因となったもので未だ解決しておらず、新戦力獲得によって解決出来るものはRWGの不在である。

 

また、ユナイテッドに必要なRWGは突破力や視野、判断能力を持ち、ゴールやアシストにも深く関われることが出来る選手ということになるのだが、AWBの攻撃性能を考えれば多少の妥協も出来ず、真にワールドクラスと言える選手が必要になる。

 

世界広しと言えどそのような特徴を持つワールドクラスの選手はなかなか都合良く転がっているものではないし、況してやそれが20歳という年齢で、自国籍の選手だと言うのだからユナイテッドが放っておくわけがない。サンチョの獲得を熱望するのは当然のことというわけだ。

 

サンチョの本職は左サイドだが、右サイドでもトップレベルでプレーすることが十分出来ることは証明済みであり、プロフィールも完璧。

他のクラブには払うことを躊躇するような移籍金もユナイテッドには払うことが出来る資金力がある。

 

問題なのはユナイテッドに来季のCL出場権があるかどうか、もしユナイテッドが来季のCL出場権を得ることが出来なかった場合にはサンチョ本人が来季のCL出場権にどれだけ高いプライオリティに置いているかどうかだ。

シティのFFP違反による処分がどうなるかはまだ分からないが、ひとまずはリーグの再開により、幸運にも順位を上げるチャンスは転がってきたのでサンチョ獲得のため、向こう10年の成功のため、何としてでもTOP4に滑り込みたい。

 

 

 

 

 

以上