スールシャール3年目の現在地と来季の目標

 

はじめに

 

EL決勝での敗戦を受け、「タイトル獲得」を4年目の至上目標として要求するファンが多いが果たしてそれは現実的な目標であるのか、
今回はスールシャール政権3年目のユナイテッドの現在地を確認しつつ、

"現実的な"4年目の目標について書いていければと思う。

 

 

 

来季の至上目標としての「タイトル獲得」について

 

2018年12月19日に、暫定監督就任から始まったスールシャール政権は2年半を越え、3年目を迎えた。

20-21シーズンはリーグ順位を昨季の3位を1つ上回る2位で終えることとなったが、シーズン通した内容としては順位1つ分以上の進歩を見せた、と評価して間違いない。

また20-21シーズンは一時的なものであったがリーグ首位に立ち、ELでは決勝進出を果たすことが出来た一方で、結果としてはタイトル獲得数は0に終わり、EL決勝ではPK戦での敗北という苦い思いを経験したことで、より一層「タイトル獲得」を意識させられたシーズンでもあった。

 

こうした中でクラブ内外問わず「タイトル獲得」への期待が膨らむことは当然の流れであり、来季の目標の1つとして「タイトル獲得」が挙げられることはおかしくはないのだが、問題はその目標の強度であり、「来季タイトルをとれなければ解任」と声を上げるのは流石に度が過ぎている、と個人的には考える。

 

ユナイテッドは長らくメジャータイトルから遠ざかっているが、ご存知のように本来のユナイテッドは毎年タイトル獲得を望まれるビッグクラブであり、近年のリヴァプールやシティの躍進を見れば面子を保つためにも「タイトル獲得」を焦るファンが多いのも理解出来る。


また、チームのパフォーマンスが悪い時期やビッグゲームでの敗戦後には必ずと言って解任論が吹き荒れるスールシャールの監督としての能力については依然懐疑的な見方が強く、ファンから広く、長期的な信任を得るためにタイトルを獲得することは必要になってくる。

 

しかしながらスールシャールがユナイテッドに帰還してから12月で4年目へ突入する今季、ファンから「タイトルを獲得出来なければ解任」という要求を突き付けられるほどに「タイトルを獲得して当然」と言われるほどチームは成熟したものであるだろうか?

それともそうしなければいけないほどにこの約2年半には価値がなく、チームは危機に迫っているのだろうか?

 

個人的な答えとしてはどちらにも「No」であるし、タイトル獲得までの猶予はコロナ禍で選手の入れ替えに遅れがあることを考えればまだ2シーズンはあるはず(べき)だろうと考える。

 

「長らくメジャータイトルから遠ざかっている」という事実から目を背けて、課題の根本的な解決を怠った結果が18-19シーズンの悲惨なチーム状況であったはずだ。偶然手に入れた国内カップ戦のタイトルでお茶を濁す、ファンの機嫌をとるというのはアーセナルがやることでユナイテッドが行うべきことではない。(もちろん国内カップ戦を軽んじるわけではないが)


そしてたった1年2年という短い時間を我慢出来ず、監督交代という劇薬にクラブの未来を委ねることはスールシャールの正式監督就任から2年間、行われてきた「長らくメジャータイトルから遠ざかっている」原因となっている課題解決のためのあらゆる改革を軽視するも同然であり、これは避けるべきだ。

 

 

3年目の現在地

 

それでは3年目の折り返し地点と言える時期にある今、ユナイテッドの現在地はどこにあるのだろうか。

この夏のマーケットでの動きによって多少変動するだろうが私が思うにユナイテッドはリーグ内では現在、3番手もしくは4番手にあると思う。


直近2シーズンは他クラブの低調な出来に助けられた面が大きく、シティとリヴァプールという2つのライバルクラブとの間にはまだまだ大きな差がある。野戦病院と化しながらもあの順位でフィニッシュしたリヴァプールは世代交代が課題ではあるが来季はまだ力を保持し続けるだろう。
そしてチェルシーはクラブの体制が早くから整備されており、監督のカラーに左右されないクラブ運営が可能な体制を持っている。そしてそれはトゥヘルという監督を得たことで早くもビッグイヤー獲得という結果をもたらした。

 

そのようなリーグ状況においては、現在のユナイテッドはチェルシーと並ぶか並ばないか、そのくらいの位置にいるだろう。(もちろんその位置がそのまま順位に反映されるわけではないのがスポーツの面白いところなのだが。)

 

スールシャールの監督着任からの2年半で選手の入れ替えだけでなくアカデミーやフロントの体制に至るまでクラブ内で様々な改革が行われており、ユナイテッドはファーガソン勇退後の迷走が嘘のように力をつけることに成功している。

 

今夏のマーケットでもその改革は効果が見え始めており、改革への信頼性は時間を得るのには十分なものだろう。僕らファンがすべきことはその改革の行く末を少しの間見守ることだ。

 

スールシャール着任後の改革については以前書いたものがあるので良ければ読んでください。

redwing777.hatenablog.com

 

 

自分の書いたものは表面上の変化についてはあまり触れていないので、そちらについて分かりやすくまとまっていた記事があるのでリンクを貼っておきます、そちらも参考にどうぞ。

 Manchester United's behind-the-scenes changes since Solskjaer's arrival | United Journal (theutdjournal.com)

 

ではこの2年半でどんな変化を経て今に至るのか、まとめてみたのでひとまずは下の画像を見て欲しい。

 

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モウリーニョから引き継いだ瓦解したチームをまとめ上げ、ピッチ内外においてクラブを順調に成長させていることだけが伝われば。

 

未だに選手の入れ替えは十分に進んでおらず、クオリティが欠けているポジションが多くあるのが現状で押しも押されもせぬ優勝候補に挙げられるにはまだ一歩足りない。

 

 

今夏のマーケットでは早々にサンチョ獲得を決め、ヴァランやカマヴィンガなどネームバリューのあるターゲットの獲得に精力的に動いてはいるが新戦力が馴染むまで1年は見る必要があること、

 

ここ最近2年の過密日程とEUROの開催によりコンディション不良や怪我を抱える選手が多くいること、そしてそれに伴い離脱者が相次ぐだろうこと、

 

デヘアやポグバ、マルシャルの去就によってはチーム内が揺れる可能性があること、

 

その辺りの不確定要素がそれなりの確率で起こると考えればタイトル獲得への強すぎるプレッシャーはチームを瓦解させる原因になりかねない。

 

また、今夏の移籍市場ではストライカーの補強まで手が回らず来夏に先送りされることがほぼ確定事項であり、どれだけ他のポジションが充実していても最終地点になるべき優秀なストライカーが不在であれば大きな欠点となってしまう。カバーニは年齢的にフル稼働は望めず、グリーンウッドは未だに成長途上であり、連戦起用が出来ない。ラッシュフォードはまず怪我を癒やすことに専念すべきであるしそもそも純粋なストライカーではない。マルシャルに至っては昨季怠慢なプレーに終始したことでもはや放出候補である。


獲得競争は熾烈ではあるが、来夏にラストピースとしてホーランの獲得を狙うのが既定路線だろうし、来季にホーランの獲得かグリーンウッドの覚醒、このどちらかを達成して初めてリーグタイトルを狙えるだけのピースが揃ったと言えるだろう。

 

また今のチームは若い選手が中心であるため経験不足の面が否めず、また昨季は舐めグセとも言えるような先制されてから本気を出すような試合展開が多く、安定して勝ち点3を稼ぐことが求められるタイトル獲得には不安要素ではある。

 

タイトルを要求しないなんて何を甘いことを、と言われるかもしれないがそのくらいにリーグ優勝は本来難易度が高いものである。カップ戦のタイトルは一発勝負故に幸運さがあれば獲得可能ではあるが、カップ戦で稼いだタイトル数を持ち出してくるのは某ポルトガル人監督くらいにしてもらいたいもので目指すべきはリーグやCLでの優勝であるべきだ。


そもそも「応援する」ということや「信じる」ということは無理な目標を押し付けることではない。
必要なのは短期スパンで少し背伸びした目標を持つこと、長期スパンでは夢みたいな目標を持つことで、身の丈に合わない、無理な目標を押し付けるのは自分らの出過ぎたエゴでしかない。

 

今後2年でチェルシーリヴァプールをきちんと躱し、シティーの背中を捉え、タイトル獲得を本格的に狙うというのが現実的な目標だろう。

 

 

アクションプラン

 

これまでは来季の至上目標として「タイトル獲得」を掲げることは正しいのか、ということしか述べてこなかったがここからはタイトル獲得のために必要なこととは何なんだろうか、という話をしていきたい。

 

スールシャールやクラブは目先のタイトル獲得をゴールとはせず長期的な成功サイクルを構築しようと様々な改革を進めている途中であるからタイトル獲得を目指す短期的プランと成功サイクル構築を目指す長期的プラン、2つに話を分けて書いていきたいと思う。

 

ひとまずは2つの図を見て欲しい。

 

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上の図(図3)はタイトル獲得を目指す短期的プランであり、下の図(図4)は再建から成功サイクル構築を目指す長期的プランである。

 

成果目標がタイトル獲得に絡むものではあるものだが、その目標を達成するために重要な要素、CSF(Critical Success Factor)は大きく異なる。


見ているスパンが違うので2者間でCSFが異なるのは当然の話ではあるのだが長期的プランは短期的プランでの成功が基になっており、かと言ってどちらかに偏った施策をとるとクラブのバランスは崩壊する。

 

構成要素を大きく3つに分類してCSFを挙げてみたが実際の構成要素の数はこれよりもずっと多いものであり、CSFもいくつか足りないだろう。


各構成要素に対してアクションプランが1つないしは複数存在し、これを1つずつクリアーしていくことで成果目標は達成可能となる。

 

ただ、フットボールの成績はビジネスとは異なり、タイトルというものは順位に基づいて与えられる相対的なものであり、他クラブの出来によってはCSFをすべて達成せずともタイトルは獲得であるし、成功サイクルも構築可能ではある。
最近では15-16シーズンの"ミラクルレスター"が記憶に新しいが、リソースを最大化し、運を味方につけることが出来ればタイトル獲得は可能ではある。


しかしながらタイトル獲得を幸運に委ねることは準備を尽くしてからすべきことであるし、シティやリヴァプールといったライバルクラブたちはこの辺りの整備を抜かりなく行うことで躍進し、今の成功があることを忘れてはならない。

 

今夏の移籍市場でのスピーディーかつ的確な動きを見ればクラブの体制整備は成功を収めたように思えるし、アカデミー改革としてこれまでとは比較出来ないほど積極的に青田買いやローン移籍を行っていることも2,3年後には効果が現れてくることだろう。このような中でクラブ再建ひいては長期的プランでの成功サイクルの構築は着実に進んでいると言って間違いなく、正当に評価されるべきだと考える。

 

(アカデミー改革については1年半以上ブログ書く書く詐欺をしてる友人のブログで触れられるはずなので待ってあげてください)

kujira|note

 

来季の目標

 

話は少しそれてしまったがそれでは来季の目標としてはどんなものが相応しいのか。

現有戦力での最低ラインはCL出場権獲得だろうが原因分析次第では最低ラインを割ったとしても解任を免れる可能性があり、それくらいにスールシャールは今のユナイテッドの長期的プランの中核にいて評価されている。

 

同じ理由で今季タイトル獲得数が0だとしても解任はされないだろうし、これまで述べてきたように今季の史上目標として「タイトル獲得」を掲げるのは時期尚早であり現実的ではない。今季は短期的プランにおいても未だプロセスの過程におり、本格的にタイトル獲得を狙える段階にはない。

 

現実的な目標としては、やはり「タイトルチャレンジャーへと生まれ変わること」だろう。


理由としては先に挙げたいくつかの理由により、今のユナイテッドは真に優勝候補と言える段階になく、また真に優勝候補と言われるようになるためには多くのアクションプランを達成する必要がある。

 

来季も未だ粛々とアクションプランを達成していくべき時期であり、短期的な視点でタイトルを狙いによりも長期的な視点で成功サイクルを構築することにより力を入れるべきである。

 

 

おわりに

 

だらだらと長文を書いておいて結局は広く浅く、日頃のツイートまとめくらいの内容でしかない上に、どんな目標が最適なのかは個人差があるのでこれを読んだところで……と言った感じではあると思うし、余計な雑音は増やさないようにねといういつもの結論です。

 

……そもそもお前選手総評は?というツッコミはなしでお願いしたい。

 

 

では